著作権と著作権法のあらまし

　著作権法は、著作者の権利を定め、著作物を保護する法律である。要約すれば、以下の２点となる。
・著作物を利用する権利は、すべて著作者（著作権者）が独占的に有する。
・他人が著作物を利用する場合には、著作者（著作権者）の許諾が必要である。許諾のない利用（無断利用）は、著作権侵害となる（ただし、公益性などの理由から、権利者の権利を一部制限し、許諸なく利用できるケースも定められている）。

 

目　　　　　次
著作物とは何か
著作者と著作権の内容
著作者人格権
著作権（著作財産権）の種類
著作権侵害の罰則
著作物を許諾なく利用できるケース
著作物の利用許諾

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■著作物とは何か

　著作物とは人間の思想や感情を創作的に表現したもので、以下の九つのジャンルに分けられる。

　上に掲げたものはあくまで例示である。これからも新たに著作物とされるものが現れる可能性がある。

　注意点としては、

• 「思想や感情」を表現したものでなければならないので、単なる事実（日本の人口数や、富士山の高さなど）は著作物ではない。新聞に掲載されている死亡記事のうち、故人の経歴や葬儀の日時などが書かれているものは著作物とはいえないが、故人の業績に対する評価や評論が書かれていれぽ、その部分は著作物といえる。
• 「表現」したものでなけれはならないので、ゲームやスポーツのルール、料理の方法などのアイディアは著作物ではない。
• 著作物であっても、著作権の対象にならないものがある。（例）法令（条例を含む）、国、地方公共団体、独立行政法人から出される告示、裁刊所の判決など。
• 著作物は、著作者の生存中と死後50年間、著作権法で保護される。したがって、保護期間が切れた著作物は自由に利用できる（ただし、人格権を侵害する行為はできない）。
  　例外：無名・変名の著作物の場合は公表後50年（ただし死後50年が明らかであればその時点まで）、団体名義の著作物と映画の著作物は公表後50年（創作後50年以内に公表されなかったときは、創作後50年）

■著作者と著作権の内容

　著作者とは「著作物を創作する者」のことで、過常は自然人である個人が著作者になる。著作権者とは、著作権のうち「著作財産権」を保有している人を指す。したがって、著作物を創作した時点では、「著作者」＝「著作権者」であるが、そののち、著作財産権を誰かに譲渡して　権利が移転した場合、「著作者」と「著作権者」は別々の人になる。

　職務として創作活動を行った場合、一定の条件がクリアされれば、その人が所属している会社が著作者（著作権者）になる場合がある。これを「法人著作」と言う。新聞社の社員が職務で撮った写真や、職務で書いた記事などがこれにあたる。

　映画の場合は、たくさんのスタッフが製作にかかわるので、全員が著作者になると権利行使が難しくなる。そこで、映画の全体的形成に創作的に寄与した者（プロデューサー、監督、撮影監督、美術監督）が「著作者」となり、映画製作者（映画会杜や放送会社）が「著作権者」となる。

　著作権は、著作物を創作した時点で自然に発生する。登録などの手続きによって発生するわけではない。

■著作者人格権

　著作権には、「著作権（著作財産権）」と著作者の人格的利益を保護する「著作者人格権」の二種類がある。

　著作者人格権は、著作物は著作者の精神的な活動から生じる自己表現の成果であり、著作者の人格的利益（名誉や感情など）と切り離すことはできないとの考えから生まれているもので、一身専属といって、他に譲渡できないし、相続の対象にもならない。
　なお、このような性格上、著作者が死亡すると同時に消滅するが、著作者の死後も著作者人格権の侵害となる行為はできない。

■著作権（著作財産権）の種類

　著作権（著作財産権）は、財産権なので、物権や債権のようにその一部または全部を譲渡することがでるし、相続の対象にもなる。

  1　複製権　著作物を複製する権利

複製とは、著作物を有形的に再生することで、手写、印刷、写真、複写、録音、録画など、方法は問わない。具体的には、小説を印刷して本にする、絵を模写する、音楽を録音する、TV番組を録画する、新聞記事をコピーする、コンピュータソフトウェアをハードディスクにインストールするなど、あらゆる場面で複製は行われている。また、音楽をMIDIその他の方式でコード化してディスクに収納すること、写真や絵画をデジタル化してビットマップ形式などにすることも複製である。

 2　上演権、演奏権　著作物を公に上演、演奏する権利

音楽の歌唱、演劇上演、落語や漫才などの上演などがあたる。

 3　公衆送信権　著作物を公に伝達することを目的として無線通信（放送を含む）、
　　または有線電気通信の送信（有線放送を含む）を行う権利

「公衆送信」には「送信可能化」を含む。これは、公衆からのリクエストに応じて自動的に情報を送信する「自動公衆送信」の場合で、情報を、利用者からのアクセスにより送信可能な状態に置くことを指す。たとえば、インターネットのサーバーに情報をアップロードする場合がこれに該当する。

 4　口述権　言語の著作物を朗読などの方法で口頭で公に伝達する権利

口述で録音された著作物を再生することなども含まれる。

 5　展示権　美術の著作物と未発行の写真の著作物の原作品を公に展示する権利

 6　頒布権（映画の著作物のみ）
　　映画の著作物の複製物を公衆に対して譲渡または貸与する権利

「頒布」とは、有償、無償を問わず、著作物の複製物を公衆に売ったり、貸したりすることをいう。

 7　譲渡権（映画の著作物以外）　映画以外の著作物について、その原作品または複製物を譲渡により公衆に提供する権利

国内外において適法に譲渡された場合には、その時点で譲渡の権利がなくなる。

 8　貸与権（映画の著作物以外）　映画以外の著作物を公衆に貸与する権利

音楽CDやビデオのレンタル業は、この権利に基づいて権利処理が行われている。なお、書籍や雑誌は、現在は貸与権は及ばない経過措置がとられている。

 9　上映権　著作物を公に映写幕その他のものに映写する権利

映画だけでなく、写真、美術、言語、音楽などあらゆる著作物をディスプレイなどで映し出すことが該当する。

10　翻訳権、翻案権など　著作物を翻訳、編曲、変形する権利と、脚色、映画化するなど翻案する権利

翻訳とは、言語の著作物を他の言語で表現し直すこと、編曲とは、音楽の著作物をアレンジして原曲に付加的価値を生み出すこと、変形とは、写真を絵画にするなどして　表現形式を変更することなどを指す。また翻案には、長い文章を要約することも含まれる。これらの作業には、なんらかの創作性がある。

11　二次的著作物の利用権

二次的著作物を利用する場合、原著作物の著作者と、二次的著作物の著作者は、同じ権利を持ちます。たとえば、小説が脚色され映画化された場合、その小説家（原著作物の著作者）は、脚本や映画の著作物の著作者（二次的著作物の著作者）が有する権利と同じ権利を持つ。

　なお、上にある権利のうち、「公に」とあるものは、公衆（特定かつ多数）を対象にしている場合だけが該当する。たとえば貸与権は、「公に」貸与する場合が該当するので、特定の友人に貸すことは、著作権法の及ぶ範囲ではない。

■著作権侵害の罰則

　著作権侵害は、３年以下の懲役または３００万円以下の罰金（119条）。法人の業務などに関して侵害行為が行われた場合には、その法人などにも１億円以下の罰金が科せられまる（124条）。
　なお、民事上の責任を問われる場合もある。

■著作物を許諾なく利用できるケース

　著作者は、著作物を利用する権利を独占するが、著作権法では、ある程度これを制限して、著作物を著作権者の許諾なく自由に利用できるケースを定めている。しかし、著作権者の権利を不当に侵害しないよう、どのケースでも条件が厳密に定められている。
　ここでは代表的なケースを挙げる。

私的使用のための複製（30条）
　個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、その使用する者が複製することができる。ただし、次の(1)または(2)の場合には複製することができない。
　(1) 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いる場合（当分の間、文書複写機を除く）。
　(2)技術的保護手段の回避により可能となり、またはその結果に障害が生じないようになった複製をその事実を知りながら行う場合（ただし、記録または送信方式の変換に伴う技術的な制約による除去または改変による場合は除く）。
　なお、デジタル方式の録音録画機器を用いて著作物を複製する場合には、著作権者に対して補償金を支払わねばならない。その補償金は機器の販売時に徴収している。

図書館などにおける複製（31条）
　政令で定める図書館などでは、利用者の求めに応じる場合、「利用者の調査研究用に供すること」「公表された著作物の一部分であること」「利用者一人につき一部提供するものであること」の条件を満たせば、営利を目的としない事業として複製することができる。

引用（32条）
　公表された著作物は「引用」して利用することができる。「引用」として認められるには、つぎの五つの要件を満たす必要がある。

1. 公正な慣行に合致していること
2. 他人の著作物を引用する必然性があること
3. かぎ括弧を付けるなど、引用部分と自分の著作物とが区別されていること
4. 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること
5. 合理的な方法での出所の明示がなされていること

学校その他の教育機関における複製（35条）
　学校の授業で使うために、授業を担任する教師が　公表された著作物を複製することができる。六つの要件を満たす必要がある。

1. 営利を目的としない学校その他の教育機関であること
2. 教育を担任する者及び授業を受ける者が複製を行うこと
3. 公表された著作物であること
4. 授業の過程での使用を目的とすること
5. 必要と認められる限度の複製であること
6. 著作権者の利益を不当に侵害しない複製であること

時事問題に関する論説の転載など（39条）
　新聞・雑誌に掲載された政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説は、転載禁止の表示がない限り、他の新聞・雑誌に転載したり、放送したりすることが可能である。典型的な論説は新聞の社説で、連載コラムなどはこれに該当しないとされている。

翻訳、翻案などによる利用（43条）
　私的使用のために複製する場合、教育目的で利用する場合には翻訳、編曲、変形または翻案することが可能である。また、図書館での複製や引用などの場合には翻訳して利用することが可能である。

プログラムの著作物の複製物の所有者による複製など（47条の2）
　プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製または翻案をすることがでる。コンピュータプログラムを利用するに際しては、コンピュータのハードディスクにインストールしたり、基本ソフトの特性により一部の改変をしたりすることが必要とされる場合が多く、これを可能とする規定である。ただし、複製・翻案できるのは複製物の所有者である場合に限られるので、売却などにより所有権を失った場合には、作成した複製物・翻案物を保存してはならないとされている（違反すれば、権利侵害となる場合がある）。

• 試験問題としての複製（36条）
• 営利を目的としない上演・上映・貸与など（38条）
• 教科用図書等への掲載（33条）
• 学校教育番組の放送など（34条）
• 点字による複製など（37条）
• 聴覚障害者のための自動公衆送信（37条の2）
• 政治上の演説などの利用（40条）
• 時事の事件の報道のための利用（41条）
• 裁判手続等における複製（42条）
• 情報公開法等による開示のための利用（42条の2）
• 放送事業者等による一時的固定（44条）
• 美術の著作物等の原作品の所有者による展示（45条）
• 公開の美術の著作物などの利用（46条）
• 美術の著作物等の展示に伴う複製（47条）
• 複製権の制限により作成された複製物の譲渡（47条の3）

■著作物の利用許諾

　他人の著作物を、著作権の種頬にあるような方法（複製、公への上演・演奏、公衆送信など）で利用する場合には、まず、以下の項目をチェックします。
１　著作権法で保護されている著作物である
２　保護期間内の著作物である
３　利用の仕方が、著作権法に規定される権利に触れる
４　利用の仕方が、自由利用が許されるケースではない
　どれか一つでも該当したら、著作権者の利用許諾を得なければならない。これを一般的に「権利処理」と呼ぶ。

　許諾を求める際には、できるだけ利用の態様を詳しく説明した上で、文書で、利用の仕方、許諾の範囲、使用料の額と支払い方法などを確認するようにする。契約なので、口頭でも成立するが、許諾の内容を明確化するためにもできるだけ書面をもって締結するはうがよい。
　利用許諾の交渉は、著作権者本人またはその代理人（エージェントなど）、または著作権を委託されている著作権管理団体と行う。

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