亜歴山加米龍西母氏蘇格蘭土之人以西暦一千八百四十年八月二十八日生氏頗富諸諸般之経験而距今三十年前来住於我神戸公平誠実専慮彼我之幸福竭力於公共之事業当時為神戸居留地会議員夙組織居留地消防組率先従事又創設競舟運動倶楽部而大奨励之氏曾篤済貧恤窮之志毎聞各地之災害自進募有志者尽力於義捐之事挙其一二者如大阪府下之洪水如岐阜県下之震災如東北海岸之海嘯皆是以一轍之精神救助災民其功徳可謂偉矣惜哉一朝罹病終不起西暦一千九百年十一月二十八日歿於神戸茲記其概梗如此
（読み下し）
亜歴山加米龍西母氏は蘇格蘭土の人なり。西暦一千八百四十年八月二十八日に生る。氏は頗る諸般の経験に富む。而して今を距ること三十年前に来り我神戸に住む。
公平誠実、専ら彼我の幸福を慮り、公共之事業に力を竭くす。当時、神戸居留地会議員と為り、夙に居留地消防組を組織し、率先して従事す。又、競舟運動倶楽部を創設して大いに之を奨励す。
氏は曾つて済貧恤窮の志篤く、各地の災害を聞くごとに自ら進んで有志の者を募り、義捐の事に尽力す。其の一二の者を挙ぐれば、大阪府下の洪水の如き、岐阜県下之震災の如き、東北海岸の海嘯の如きなり。
皆是一轍の精神を以つて、災民を救助す。其の功徳偉と謂ふべきなり。
惜しいかな、一朝病を罹ひ終ひに起きず。西暦一千九百年十一月二十八日神戸に歿す。茲に其の概梗を記すこと此くのごときなり。
（意訳）
シム氏（Alexander Cameron Sim）はスコットランドの人で、西暦1840年8月28日に生まれた。氏はたいそうさまざまな経験に富んでおり、今から30年前に神戸に来て住んだ。
公平誠実で、互いの幸福に配慮し、公共事業に力をつくした。当時、神戸居留地会議員となり、早くから居留地消防組を組織し、率先して従事した。又、競舟運動倶楽部（Kobe Reggata & Athletics Club）を創設して大いにこれを奨励した。
氏は曾つて済貧恤窮（貧しきを済い窮する者を憂う）の志が篤く、各地の災害を聞くごとに自ら進んで有志者を募り、義捐事業に尽力した。其の例を挙げれば、大阪府下の洪水、岐阜県下の震災、東北海岸の海嘯（つなみ）等である。
皆是一轍の精神を以つて、災民を救助した。其の功績は偉大である。
惜しいことに病に罹り、回復することがなかった。西暦1900年11月28日神戸で歿した。ここに其のあらましを書き記す。
碑文の読み下し、意訳について、大西堯哉さんに
ご教示を頂きました。記して感謝の意を表します。